岐阜家庭裁判所 事件番号不詳 判決
本籍 岐阜市長森細畑八二六
住居 同市長森細畑八六
無職 小島しん事 小島志ん 明治二十四年十二月十二日生
主文
被告人を罰金八千円に処する。
右罰金を完納することができぬときは金二百円を一日に換算した期間労役場に留置する。
但し二年間右刑の執行を猶予する。
理由
第一罪となるべき事実
被告人は昭和二十九年九月十日頃名古屋市中村区名楽町一丁目二十三番地芸妓置屋成田屋宮嶋すゑ子方において同人に対し、同人が児童に淫行させる行為をする虞があることを知りながら児童であるM子(昭和十四年二月二十二日生)を引渡したものである。
第二証拠の標目
被告人の司法警察員に対する供述調書
同人の検察官に対する供述調書
F子の司法巡査に対する供述調書謄本
M子の司法巡査に対する供述調書謄本
宮嶋すゑ子の司法巡査に対する供述調書謄本
同人の検察官に対する供述調書謄本
被告人の当法廷における供述
第三法令の適用
児童福祉法第三十四条第一項第七号、第六十条(罰金刑選択)、刑法第十八条、第二十五条
被告人は当法廷において「M子の姉U子が、M子は十八才になつていると言つたし、見たところ二十二、三才にみえたので世話した。又十八未満の児童に淫行させる虞のあるところえ世話することが法律上許されないとも知らなかつた」旨主張する。
按ずるに被告人がM子の姉U子の言を信じ、またM子の身体外形上から十八才以上だろうとしてもそれは法律上所謂事実の錯誤であつて被告人が適当の注意義務をつくし、例えば児童の戸籍抄本をみるとか、児童の年令を知る者について調べてみるとかして慎重に調査したならば右児童の年令を知り得たであろう。然るに被告人が斯様な調査を怠り、軽率に児童の年令を十八才以上と誤信したところに過失があり、従つて犯意を阻却するとは言いがたい。
又被告人が「十八才未満の児童に淫行させる虞のあるところえ世話することが法律上許されないことも知らなかつた」としても、それは法律の不知であつて、それを知らないことについて相当の理由があるわけでもないから、それがために罪を犯す意なしと為すことを得ない。よつて被告人の弁解は採用しない。
併しながら、被告人が本件犯罪を犯すに至つた訳は、U子(M子の姉)から、M子は名古屋駅裏の一杯屋につとめているが、M子の弟を学校えやることもできぬから、M子を水商売でもよいから何処かえ世話してくれと頼まれたし、被告人はM子の母ともその生前においては近隣の関係で知合いであつた関係もあつたので一家の貧を救つてやる意味で前記成田屋え世話してやつたのであり、児童を引渡したことにつき別に報酬が目的であつたわけでもないことは被告人の当法廷における供述によつて認め得るところであるから、刑法第二十五条により二年間右罰金刑について刑の執行を猶予するのを相当と認める。
仍て主文のとおり判決する。
(裁判官 武田雄一)